詩「月末」

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十二月末は死を想う ぎっしりの厭世感で財布は重たく 生きることが働くことだとしたら 確かにもう何年も何十年も働いてきた 西暦は変わり 夏は冬になり 風に揺れる稲穂が真っ赤に燃えて ああ 人生は夕焼けだ 残高を確かめる行為は 余命を縮める愚かな遠吠え 蝋燭の幽かな火が 冷風に晒されるあの恐ろしい瞬間から 私はいつか開放されるのだろうか 家族の願いはいつも侘しい 幼い娘は口を膨らませながら なにかを物欲しそうに 空間の一点を眺めている そこにはなにもない 揺れることも実ることも シャボン玉のような透明な塊を
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