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「おい、廊下に抜け殻が落ちているぞ」
ラジオの音楽が流れる研究室。
田辺は茶色にかさつく紙のようなものを持ち、助手に注意する。
「え、これ皮なんですか?」と驚く助手に「…ああ、そう言えばお前さんは知らなかったな」とため息を吐き、田辺は紙を広げて見せる。
「じゃあ、誰かが新薬を飲んじまったんだな。新陳代謝を促して皮膚下から筋肉から内臓系まで狙った人間の細胞を作り出す薬を作成したんだが…変身薬と言えばファンタジーに聞こえるが、髪や皮膚、DNAを取って内服すれば誰にでもなれる。お偉いさんの依頼で機密事項だったんだが…ってか、誰だよこれ」
びろつく皮をほぐしつつ、田辺は顔を見て首を傾げる。
「なんか知らん顔だが、お前さんも心当たりは…え?」
『速報です。先ほど刑務所から連続殺人犯が脱獄しました。付近の住民は外出しないよう、また怪しい人物を見つけた場合は速やかに警察に連絡を…』
田辺の腹には深々と突き刺さった包丁。
…ラジオの流れる棚の隙間から、赤黒い血が滴っていた。
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