障害となる男 side周

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障害となる男 side周

 筝羽が学校へ戻ってから数日が経過した。  最初の方は筝羽の体力低下に俺はかなり焦っていたが、徐々に筝羽も体育にも参加できるようになっていた。  俺は自慢ではないが運動全般もそれなりにできる。体育程度のことなど、本気にならなくても卒なくこなす。  それよりも筝羽のへの心配の方が先行していた。  筝羽は学校では前と変わりないよう生活していた。  誰も暴漢に襲われた事実など微塵にすら思っていないだろう。  実際何も無かった!! そう俺は苦笑する。  だけど家に帰ってからの箏羽は自分から外へ出ようとはしなかった。ただし俺の買い物に付き合ってくれる。  そんな受動的な行動に変化がみられていた。  それは特に校内で顕著に表れる。  ◇  俺という人種はたぶんモテると思う。  実際箏羽の気を引き換えに色々な女と付き合ってきたが、特に心ときめくことは無かった。恋愛対処スキルばかり上がっていく。 『誰もが羨ましがるような優しい彼氏』の演出ぐらいは朝飯前だった。  俺が欲しかったものはそんなものではない。本当は箏羽だけだった。  それなのに筝羽はどんどん遠くへ行ってしまう。  陥る負のループなのは分かっていた。分かっていたが、結局自分にも意地が出てしまい、無駄な女との付き合いばかり増えていた。  だが筝羽の暴漢の事件の前に元カノと別れておいて良かったと、本気で自分を褒めていた。 「周ってホントにアタシのこと好きなの!?」と言い詰められてウザくなったのが、事の顛末だった。  そして俺はそのまま別れを切り出した。  ただ筝羽が学校に復帰して、その女によるその逆恨みが箏羽に向けられていることにはイライラしていた。  直接的には俺が牽制しているので、何もないが……噂や視線は俺でも気付くぐらいの痛いものが噂されていた。  この時ばかりは俺も箏羽を追い込んだのか、という不安もあった。  初めて俺は女子絡みで後悔をすることとなる。
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