始話 僕と列車と

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始話 僕と列車と

 僕は列車の名前くらいは分かるけど、列車に乗るなんて簡単と思ってた。 「ほーら、息子。おばあちゃんの所に、立派になった姿を見せておいで」  お母さんの言い付けを守らないと。はー、めんどうくさいな。お母さんは続ける。 「おばあちゃんの家は車で行ってるけど、今回ばかりは仕事の都合で手が離せないの、代わりに列車を乗り継いで行ってきてね」  お父さんの車に乗ると半日掛かるけど、待つのは退屈で、コンビニやドライブインなどに寄って、お菓子や食事を食べるけど、車と列車じゃまるで違うよ。しかも僕ひとりで? 冗談じゃない。  母は列車の乗り継ぎ先をメモしながら説明する。話し半分で聞いてる僕は、おばあちゃんの顔を思い出して、おこづかいくれる優しいばあちゃん。  おじいちゃんも口数は少ないが、こんなおじいちゃんになりたいと、インパクトを受けたおじいちゃんだ。  母方の両親にあたる、おこづかい欲しいし行かないと。  おじいちゃんは良く父さんと話をするが、僕はどんなお話をすれば良いのだろう、観察はするが声を掛けにくく感じる。これは行くしかない。  ひとりで行くのは心配だけどと、お母さんはこぼし、それでも多めにお金を持たせてくれた。  僕にとっては大金に思える。お菓子も贅沢しなければ、こっちのお金の範囲で買いなさいと持たせてくれた。  母さんは列車だと勝手が違うし、乗り換えと言うものをして1回乗り換える様で、クスネ行きとアジラ行きに乗るそうだ。  乗り過ごしたら場所によっては半日待たないといけないらしく、僕にとって重要な作戦であり計画だと思う。  ノハナからクスネ行きに乗り、様々な所を経由して最後の目的地がアジラのようだ。自分で話せる様になったら出発だ。
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