369日の終わり

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 前回は失敗した。 もう、一年も前の話だ。 これ以上は待てない、と毎日毎日思いながらも365日足す4日、行動を先延ばしにし続けたのは、決して私が臆病風に吹かれたわけじゃない。 度胸がないだとか、なんらかの恐れや後悔があるだとか、ましてや愛情や未練があるだとか、そんなことは一切ない。 <ある> だとか <ない> だとかややこしいくらいに宣ったが、私が365日足す4日、369日間を計画があるにも関わらず行動にうつさなかったのは、結局のところ、圧倒的に必要なものがその時点で<なかった>からに他ならない。 --何が? 単純な話、計画の要である雪が、圧倒的に<なかった>だけだ。  「***、ビール」 一年前と同じ、いや、369日変わらない、憎らしい男の顔がそこにある。私の名を、私を見遣ることなく呼ぶ。 私は席を立ち、キッチンに向かった。 お盆にセットしておいた瓶ビールと新しいグラスを持ち、それをダイニングテーブルに置く。 小さなグラスに注いで差し出したビールを、男はさも当然と飲み干した。 「はい」 もう一度注いだ後、先程まで男が使っていたグラスをキッチンの流しで洗う。 瓶一本毎に新しいグラスを使う。 今となっては、こういう些細なところも憎らしい。 今日、私はこの男を殺す。 一年越しに、満を持して、殺す。
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