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前章
「よーし、終わったっ!」
高空に清しい声が突き抜ける。
隣を歩く私は、そんな同級生に苦笑する。
期末試験でも終えたような笑顔だけれど、
実際に終えたのはある意味真逆のイベントだ。
「え、りーちゃんて文化祭嫌いだっけ?
去年も今年も、あんなにアイス食べてたのに」
反対側からは、
私の幼なじみでもある同級生がひょいと顔を出す。
「りーちゃんて呼ぶな」と突っ込みを入れてから、
いつもの凛とした声が返された。
「アイスは美味しかったわよ。でも今年は……
楽しいより、忙殺の記憶しかないわ」
「そんな……バザーの店員役、
結構面白かったよ?」
「いや、あたしはりーちゃんの言いたいことわかる。去年はさ、初日に横宮さんが来てくれてすごく面白かったのに。
栗ぃ、なんで今年は招待しなかったのよ」
「去年も私は招いてないよ、美沙ちゃん」
「あとそれ、わたしが言いたいことじゃないわね」
我が道を行く発言をそれぞれで正してみたものの、
当人はこたえずからから笑う。
「だって会いたいんだもん。
今度何かに誘っちゃう?」なんて続けるから、
もう、どう返せばいいのやら。
「でも……確かに、今年は招くべきだったかも。
大人の客って、やっぱ高い物買ってくれるし」
「人によると思うけど…?」
普段は理知的な子まで、
真面目にこんなことを呟いている。
いや、あのお隣さんに笑顔で「いらっしゃいませ」は、私がすごく困っていたと思う。
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