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文化祭恒例チャリティーバザーの店員役が、 全校での持ち回りであることは知っていた。 でも、自分がそこへ当たるのは予想外だった。 クラスに順番が来たと知っても呑気にぼうっとしていたら、いつの間にやら任されていたのだ。 もう一人は全力で抵抗したそうだけれど、 私と同じく、帰宅部の一点で押し切られていた。 この二日間、 もはや無意識で出るほどに接客用語を駆使したから、まあ忙殺を否定する気はない。 「終わっても店のこと考えるなんて、 もう立派な店員だねぇ」 美術部所属で店員役を回避した美沙ちゃんがしみじみ言うから、隣で鋭い眼光が炸裂したりする。 「冗談じゃない、顔の筋肉死ぬかと思ったのよ!  こうなるなら、日比谷ちゃんみたいに何か部活やっとくんだった!」 「お、じゃあうち来る? 一緒に粘土こねる?」 「こねないわよ。 大体今から入っても、すぐ受験生になっちゃうし」 ぴしゃりと一言、には、 急速に冷めた声音が添えられる。 二年めの文化祭が終わった今日は、 秋も深まる11月の初めだ。 「受験生だって部活できるよ?」 「そうだけど、やっぱり勉強優先でしょ。 まぁ、美大とかは別だろうけど」 「え、受けないよ? あたし花屋継ぐもん」 ぽんと放たれた一言で、会話が途切れた。 聞き役の私は更に出遅れて、 問いかけたのはもう一人の女の子。
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