似てない姉妹

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「青い蝶に誘われて、ですか」 ちゃぶ台を挟んで向かいに座ったフウカさんが、口角を上げて優しい表情で僕の言葉を繰り返す。 シオンさんは相変らず畳の上で転がったまま、縁側から澄ました顔で上がり込んで来た茶トラ猫の伸びた背中を撫でている。 時折、さらりさらりと尻尾が畳を往復する音が、ますますこの部屋の空気を間延びさせる。 ぐうたらが一人と一匹。ここにあり。 「ここは色んなものが来ますから。あの子もくつろいでますけど、新顔ちゃんですし」 横を向いてくの字に寝転ぶシオンさんのお腹にすっぽりと収まった茶トラに微笑み、お茶を啜る。 「あら、まだ緊張してます?それとも、不思議な事だらけで驚いているだけかしら」 「あんたの頓珍漢な庭を見りゃ、誰だってびっくりよ」   じわりと温かい湯呑に手を添えたまま、こくりと頷く。 「ここは何でも自由なんです。縛られない場所。ひまわりの隣で、もみじが紅く色を付ける事もある。外観は洋館だけど、中は古民家。外観は私の趣味。内装は姉さんの趣味ですけどね」 フウカさんが言うと「この匂いがたまんないのよ。ささくれも味があるし」 と、ごろんと身体を伏せて鼻を畳に押し付けた。 茶トラは潰される前にするりと身体を滑らせ、今度は縁側で寝息を立て始めた。 「あ、そうだそうだ」と、この家に来て以来畳に身体が貼り付いていたシオンさんはむくりと起き上がり、台所へと消えていく。 「ふんがっ」とか「んぬぬ」とか呻く声が聞こえたかと思うと、やれやれと額を腕で拭いながら出て来た。 手にしたお盆には半月のスイカが三つ乗っていた。
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