《 ある夏の日 》

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《 ある夏の日 》

 あれからどれくらいの年月がたったろう。  あの時の彼は、いまの私の旦那さま。  あの日のデートを、私は忘れない。  あれはそう、誕生日を過ぎた暑い盛りの日だった。  夏が本格的に始まったある日。ピカピカに磨きあげた私の車で、彼と東京デートをすべく意気揚々と出かけた。  出かけたのはいいけれど、どこもかしこも駐車料金が高く、納得したり怯えたりの繰り返しだった。  東京の道路事情はというと、車線は多いが道は狭い。  タクシーやトラックに馬鹿にされながら走るのは、注意力散漫の危険性もあり、とても怖かった。  いくら運転に自信があっても、慣れない土地ではただ疲れるだけだった。  ゴハンくらいはゆっくりと。  という彼の優しさで、夜ゴハンは地元千葉にもどり、とることとした。  早めの東京脱出だったので、急ぐ帰路でもない道。私は 穏やかな心でハンドルを握っていた。  車の中では、行き慣れたいつものお店ではなく、気になってたあのお店に行こうと盛り上がる。  ただ、なんとなくの不安が私の穏やかな心を侵食し始めた。  それは、もうすぐ千葉に入る、というあたりだった。
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