囚われる

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「ああーー」  男達は自らの肉体を楽器として供し、奏者に捧げるテノールを発する。  どれも似ているようで、やはり耳触り良いティオポルドの声に痺れた。  流石は最高位の将軍だけあって「本物」だった。 「平伏せ! 」  王の命に従い額づき、優雅に組まれた脚を包むブーツに次々と接吻する。  これが一番のご褒美と言えるだろう。   忠誠と抱擁の儀式にピリオドを打つと将軍達を下がらせ、シルク地が描く襞の華に身を投げて仰向けになる。  将軍達との儀式において、アダルウォルフのエネルギーの消耗は激しい。  身も心も捧げ尽くす忠誠に対して、此方も真摯に情熱的に向き合わなければならないからだ。 「まだ名前を聞いていなかった……」  重たげに瞼が下りるも、四隅を金のタッセルで止めた紅繻子に薔薇を織り込んだ天蓋を見詰めている内に、呟きが零れた。  
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