俺様

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元々、名前すら持たぬほど身軽な俺様だが ある日、目が覚めたら これまで以上にすこぶる、体調が良いのを 感じた。 俺様は産まれた時から都会派だが、どうやら ひとところに落ち着けない性分らしい。 今は、下町の住宅街の3丁目エリアをそれとなく、 我が縄張りにしている。 天気も良くて、おまけに絶好調。 こんな日は、我が肉体による自己ベストを 超えられるような気がしたんだ。 縄張り管内の見廻りを兼ねて、 あの場所、この場所に久しぶりに 出向いてみようと思い立った。 こっちの屋根から、そっちの木の枝へ飛び移り、 住宅街をサーカスのスター気取りかっ?と 雑魚猫共にに野次られるのを承知で、 目的地への最短ルートを探ることにする。 そういや 3ヶ月前の抗争で受けた胸の傷が、 明日は雨だって日には特に シクシク疼いていたのだが、今日は何故だか、 それすら忘れてしまいそうになるぐらいだ。 それにしても最近の家猫ときたら、どうだ? お気楽が骨の髄まで染み込んで、 飼い主の格好の被写体になり、 猫がウサギに変身するよなチンケな服まで 着せられて、 顔付きまで丸っこくなり、新発売の液状おやつを 嬉しそうに舐め舐めしやがって これじゃまるで、野生の魂まで売り渡した愛玩犬 みてえじゃねぇーか。 と嘯いていたら、向こうから大御所の登場だ、 あの骨太のシルエット、ライオンを思わせる 毛並み、 威圧感を押し出したかと思えば、 時に繰り出すラテン系の華麗なステップ、 どれを取っても只者じゃねぇー、 俺様の語尾の特徴は、「ねぇー!」なのだ。 だがあの(おとこ)も、勘が鈍ったのかねぇー、 すれ違い様には、まめに威嚇をかましてきたもの だが、本日はこちらをチラリと見たものの、 珍しくスルーだってよ。
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