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「久しぶりね、アリスちゃん。美味しい紅茶が入荷したから、良かったらどうぞ」
「ハッタと違ってヘイヤは気が利くわ」
「それで、私たちに何か用なの?」
「そうだ、忘れていた。入って来なさい」
アリスが手招きすると、初老の女が店へ入ってくる。
「邪魔するよ」
女は鋭い目つきで店全体を見渡し、一つ一つ道具を物色し始めた。
「アリスちゃん、知り合いの方?」
「彼女の名はカエデ。知り合いと言うか……あれは今朝の出来事だった。早起きをしてしまった私は暇を持て余して散歩に出かけたわ」
何故か急に語り出した。
「町の外で暴れ牛を見かけて追いかけたんだけど、途中でお腹が空いて動けなくなってしまったの」
一国の王女が牛を追いかけて動けなくなった? よく分からない情景が頭を過る。しかし、ここでツッコミを入れたら面倒なことになると思ったヘイヤは黙って頷いた。
「仕方なく木陰で休んでいたら、たまたま通りかかったカエデがパンと水を分けてくれたのよ。それで、お礼をしたいんだけど……ねえ、ヘイヤ。炸裂弾って知ってる?」
「炸裂弾?」
「ヘイヤも知らないのね。お婆さんが探しているらしいの。ハッタ、聞こえているでしょ? そんなところで何をしているのよ」
「お前が壊した鎧を片付けているんだよ!」
ハッタは不機嫌そうに答えながら、カウンターの下から自作の道具帳を取り出して開く。そこには真っ赤な石のイラストが描かれていた。
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