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「これが炸裂弾。魔法石の一種で爆弾みたいに使えるアイテムさ。魔法石は魔法力が無くても簡単な手順を踏めば誰だって使える優れものだよ。その分、高価な代物だけどな」
「簡単な手順って?」
「まず石を水で濡らす。後は表面を人肌で温めるだけ……つまり、握りしめればいいんだ。そんなことより、炸裂弾を手に入れたい理由は? これは一般人が使うようなアイテムじゃないぜ」
確かに、初老のカエデが爆弾を使う姿なんて想像できない。
「悪いことは言わないから、これにしときな。先週入荷したばかりの目玉商品だ」
そう言うと、ハッタは綺麗な透明の石を差し出した。それを見たヘイヤが目を輝かせる。
「わあ、可愛い石ね。この石はどんな効果があるの?」
「これも魔法石の一種で、使用者の一番見たい映像を見せてくれる幻覚石だ。嫌な現実を忘れて夢のような世界へトリップできるぜ。楽しすぎて現実に戻れない可能性もあるけどな」
「お兄ちゃん!」
「じょ、冗談だよ。そんな怖い顔をするなって」
ヘイヤの迫力に押されたハッタは幻覚石を隠し、誤魔化すようにカエデへと視線を移した。
「ふざけるのはこれくらいにして、改めて聞くよ。なんで炸裂弾なんて物騒なアイテムを探しているんだ?」
カエデは答えず「ここには無いのかい」と呟き、店を出ようとする。その背中に向かって「手に入れる方法なら知ってるぜ」と言葉を投げつけると、カエデは足を止めて話し始めた。
「私の息子は西の国で魔物退治をしている正義感の強い兵士だった。炸裂弾を使った戦いが得意で、英雄とまで呼ばれたらしいんだよ。たまに家へ帰ってきては自慢げに話すんだ。私の作ったパンを美味しそうに頬張りながらね」
老婆の表情がほんの少しだけ緩み、口調からは息子との思い出を懐かしんでいるようにも感じる。しかし、すぐに顔が強張った。
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