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むかしむかし、
いやまあ昔っていっても、去年くらいの事。
ある世界に、仲良しの、3匹の動物がおりました。
愛くるしくて人気者のイヌ。
頭が良くて沈着冷静のサル。
好奇心旺盛で行動派のキジ。
3匹はいつも仲良しで、
なにかあれば、Limeグルチャで連絡を取るくらい
とっても仲が良かったのです。
ある日のこと、
イヌに不思議な出来事がありました。
割と経験が無い事だったので、
どうしていいかわからなくなったイヌは
グルチャで2匹に相談しようと思いました。
落ち着いてから、スマホを取り出して
グルチャを立ち上げて呼びかけます。
🐕「おーい、サルー、キジー、おるー?」
すぐに「既読 2」の文字がつき、
チャットが返ってきました。
🐒「おはざまー」
🦆「よーっすぅ」
サルとキジはとっても元気に(ダルそうに)返事をしました。
イヌは、
おまいら通常運転キター!
とばかりに、チャットを開始します。
🐕「なんかさー、さっきさー、変なヒトに声かけられてさー?すっげ焦ったんだが?」
🦆「マジ?どんなん?」
🐕「背中に桃っぽい絵の旗立てて、模造刀みたいなん差してて、ハチマキしてさぁ」
🐒「いやぁ・・・昔話デジャブだな・・・」
🐕「やべーなーと思ってシカトしてたんだけどさ、いきなりこっち向いて、おお!イヌ!そこにいたか!とか叫ばれてさー。」
🐒「うわ、やっべーのに絡まれてね?」
🐕「いやマジ、全力疾走で逃げたよ、オレ」
サルが引き気味なのに対し、アタオカ話が大好物のキジは、野次馬根性丸出しで反応します。
🦆「うっわ、なにそれ、どこで会ったのそいつ!」
🐕「大通りに行く近道に、さびれた商店街あるやん?そこでエンカウント」
好奇心を抑えきれなくなったキジは
それはそれは前のめりでイヌに聞きました。
🦆「興味しかねーわ!ちっと見てきてよき?」
🐕「おー気をつけろー?降りんなよー?模造刀でやられんぞー」
🦆「まかせろって! しくったりしねーよ!」
2匹はクッソ笑いながらやりとりし、
それからキジはグルチャをいったん閉じて、
国道へ飛んでいきました。
キジからのチャットが止まるのを見て、
サルは改めて、イヌに聞きました。
🐒「で、なにそいつ?なんのイベント?」
🐕「いや、これがけっこうガチっぽくてさぁ?」
ガチとはどういうことなのでしょうか?
サルは不思議に思って、更に聞きだします。
🐒「どゆこと?」
🐕「オーガ潰しに行くんだけど、来てくんね?とか」
イヌからの斜め上の答えを見て、
サルは更に怪訝な顔をします。
既にどう反応していいかもわかりません
🐒「は?謎い」
🐕「そんなんよくわかんねぇの、完全スルーじゃん?」
🐒「そうするしかねーわな」
スルー事案としてサルが落ち着こうとしたら、
イヌは更に続けます
🐕「そしたらさ?腰につけた袋から、突然白い塊出してさ・・・これやるから来てくれよって」
事情が変わりました。
サルは嫌悪感を全面に出して、
更にチャットを続けます。
🐒「うわそれ・・・ヤバいヤツじゃん?」
🐕「だよなぁ・・・やってるよなぁ・・・うわ、マジ無理」
🐒「やっぱさ、やべーのはスルーしかねーよな」
危なそうなヒトの行動を見て
2匹は用心しようと心に誓いました。
その時です!
謎のヒトを見に行ったキジから、
慌てた様子のチャットが飛び込んできたのです!
🦆「なぁ!やべーよ!」
🐕「どしたー?」
🦆「イヌの事、すっげ探してんぞ?」
🐕「は!?」
突然の事に、イヌはびっくりして尻尾の毛が逆立ったまま固まってしまいました。
それでもキジはチャットを続けます。
🦆「イヌが仲間になんねーと、サルに声かけらんねー!とか叫んでて、目が血走ってさぁ、なんかやべー感じだった・・・」
🐒「は!?ちょ!?俺も!?」
思いもしない状況に、サルもびっくりして
大きいお目目が、更に大きくなります。
それでもまだまだ、キジはチャットを続けます。
🦆「そしたらいきなり上向いてさ、こっち指さして・・・お前もだからな、ちょっとまってろ順番だからな!って、叫ばれたんだが・・・」
キジはその様子を思い出すだけで、ぞっとして
羽根がひっくり返りそうになります。
完全に無関係のヒトの話と思っていた3匹は
流石に身の危険を感じて、真剣に話し合いを始めました
🐕「え、なんでオレら?」
🦆「まじ狂気じゃん・・・やべぇな」
予想もしなかった事態に、サルが提案をしました
🐒「どうしよ、通報しとく?」
🐕「だよな、公的組織に頼った方が勝ちだわ。危なっかしくてな、もう。」
🐒「ちょ、110してくるわ」
🦆「たのむわー」
奇行をするヒトに3匹は怯えて、
通報する事にしました。
冷静なサルは早速、ケーサツさんに電話をしに
チャットをいったん抜けました
これでなんともなければいいのですが・・・
しかしイヌは、はたと疑問に思いました。
🐕「ところで、あのヒトが言ってるオーガってなんだろな?」
🦆「なんか見えちゃいけないヤツなんじゃね?」
🐕「やっぱそう思う?」
🦆「あ?いや?鬼ヶ島地区で、最近イキってるヤンキーおるって。潰しに行くとか言ってんだろ?もしかしたらそれじゃね?」
🐕「いや初耳だわ、なにそれ」
🦆「鬼ヶ島地区だから、オーガらしーぜ」
🐕「安直すぎて草」
二人がオーガをほんのりバカにしていると、
サルがチャットに戻ってきました。
🐒「110してきたー、パトロールするってー」
🦆「おー、サル、おつかれじゃん」
🐒「まじだりーな、なんなんもー」
キジはサルに、ねぎらいの言葉を掛けますが、
その一方、面白い事を思いついたとばかりに
2匹に言いました。
🦆「なー、あのヒト・・・もとい、桃野郎とオーガさぁ、今、鉢合わせたら面白くね?」
🐒「ちょぉ、まじかよ~、キジ天才かよ~」
サルが楽しそうに笑いながら返事すると、
キジは邪悪な表情を浮かべ、楽しそうに言いました。
🦆「やっべ!やりてぇぇ!煽ってこよっかな!」
🐒「飛べるヤツ最強説かっ」
🦆「ちょっと行てくる! 成功したらグルチャ報告するわ!」
🐒「よっしゃ!いてら!」
さっきまで用心しようと相談していたのは何処へやら・・・
完全に2匹は楽しんでいます。
そして無鉄砲なキジはもう一度、桃野郎の元へ、バサバサと飛び立ちました。
キジからのチャットがとまり、
様子を見ていたイヌは苦笑しながら言いました。
🐕「おまえら、そーゆーの好きやな~!気をつけようとしてたテンション、どうしたよ~」
サルは心外とばかりに、言い返します。
🐒「ケーサツ来るなら、不審者がイッキにやられる方がいいだろぉ?」
🐕「おー、さすがサルやん!めっちゃ見越してるやん!」
🐒「頭は使わねーと!」
🐕「まじそれな!」
イヌがサルを褒めると、サルは続けました。
🐒「まあ、オモロいからだけどw」
🐕「草wwwwwwwww」
2匹は少々の本音を漏らしてしまいましたが、
きちんと用心をして、周辺住人を不安にさせないように通報し、様子を見守る、
建前上は善良な一般市民です。
小一時間ほどして、キジからチャットが入りました!
🦆「なーなー! 桃野郎煽って、鬼ヶ島地区に誘導したんだけどさ~」
🐕「おー、よくやるわ~」
🐒「どーなったよ~?」
イヌとサルは、キジの機動力のすごさに笑いながら、その先の事を尋ねます。
好奇心旺盛なキジは楽しさが抑えられない様子でテンポよくチャットをします。
🦆「なんか金棒みたいなの持って、くるくるパーマリーゼントの、よくわかんねぇ虎ジマの服着た奴と出くわしたんだがw」
🐕「そいつ!どう考えてもそいつ!」
🐒「オーガど真ん中じゃん!!!!」
予想以上にスムーズな展開に
3匹はもう、笑いを隠せません。
いや、既に笑いは隠してませんでしたが。
さあさあ、キジからの実況中継はここからです!
🦆「うわ、めっちゃガンつけ合い始まったw 威嚇しあってるなー?けっこう声でけぇ~、うるせぇな~!」
🐒「うっは!迷惑~!ふぅー!」
🐕「やってんな!」
キジからの実況によると、
オーガは一匹狼なのか他に仲間はおりません。
桃野郎は予定していた3匹がいないので、独りです。
これは・・・タイマン勝負か!?
桃野郎とオーガの縄張り争い(?)が始まるかと思ったその時・・・!
遠くの方で白黒の車の回転灯が見えました!
正義の味方が来たようです!
・・・あれ?桃野郎は正義の味方じゃないのでしょうか?
・・・?
まあ、それはさておき、キジは続けます。
🦆「あ、ケーサツ来たっぽい~!さっきサルが110してたからじゃね?」
🐒「タイミング良すぎかよ!しかもオレ、鬼ヶ島地区とか言ってねぇぞ?」
🐕「いや、さすがのケーサツ、さすがすぎるわ!」
ケーサツさんのタイミングの良さに3匹が驚いて(楽しんで)いると、ケーサツさんは迷惑者2人に、職務質問を開始しました。
キジの実況中継が、更に光ります!
🦆「あ、桃野郎が最初に職質くらってるw」
🐒「まあ、格好で考えると、桃野郎の方が明らかに怪しいもんな~」
🐕「いやまあ、金棒に虎ジマも相当だけどな?」
サルとイヌが辛口ファッションチェックをしていると、
キジは次の異変に気づいて実況しました。
🦆「あ!でた!腰袋から白い塊!・・・? ちょ、ま、え、あれ、きびだんご?」
3匹が不審に思っていた白い物体の正体は・・・
ヤバいブツでも、トんでしまうものでもなく、
白くてもちもちとした食感が人気
今や岡山名物、和カフェには欠かせない
きびだんごだったのです!
🐕「え、うっそ俺、きびだんごで買収持ちかけられてたの?」
🐒「え、じゃ、声かけようとしてた俺ら全員、きびだんご買収対象?」
🐕「もっちもちの和スイーツ・・・うーん、考えなくもない・・・ワケねーわ!!!なんや、きびだんご買収って!!!!!」
予想以上のショボーンな買収事案に
3匹はたまらず苦笑をしてしまいます。
さらに、駅伝マラソン並に光るキジの実況中継は、留まることを知りません。
🦆「桃野郎すげ~! ケーサツ相手にイキってる~。『きびだんごで何か法律ひっかかんのかよ?おお?』とかいってんぞ~」
🐕「やってんな!オモロい、もっとやれ!」
🦆「やべ、オーガも調子こきだした~!!」
🐒「マージかよ!どんな感じ??」
🦆「『金棒持ってるからって、なんか罪になんのかよ?おお?』とか、ケーサツにふっかけてんぞ!」
🐒「いや、軽犯罪法 第一条 二項にひっかかるわ」
🐕「よく知ってんな~w」
🐒「まかせろ~w」
サルが意外な博識ぶりでツッコミをいれます。
もう、おなかがよじれたのでしょう。
3匹は盛大な嘲笑が止まりません。
きっと、笑い転げてるに違いありません。
🦆「あ、ケーサツがすんげぇ面倒くさそうにしてるな・・・ん?無線でなんか言ってるぜ?」
🐕「なん?なん?」
🦆「ん?応援要請・・・?あー、なるほどな」
🐒「完全にフラグ立ったわ~」
🐕「これ、タイーホ案件じゃね??」
3匹はこれから起こるであろう展開を予想して
最高潮にワクワクしてしまいます!
もう、これはテレビでよく見る、「ケーサツ24時」的な流れを期待するしかありません。
あ、また状況に変化があったようです!
キジからチャットが止まりません!
🦆「桃野郎とオーガ、タイマンどころか、もう漫才じゃねーか」
🐕「ん?どした?なにあった??」
🦆「オーガが、『どこ連絡してんだよ!俺らまだ、なんもしてねーだろが!』とか叫んでるんだが」
🐒「『まだ』って言ってるあたり、なんらかの自覚はしてるんだな!」
🦆「あ、桃野郎が叫んでるな・・・?『俺はオーガ退治に来たんだけど!? ケーサツの世話になる事してねぇよ!』ってさ~。 いや、完全にしてるだろ!」
🐕「タイマンはともかく、模造刀所持も普通はアカンやろな~」
🐒「金棒も模造刀も、凶器に分類されるな」
🦆「まあ、それ以外の凶器はきびだんごだもんな~(真顔)」
🐕「ブフォ!!!」
🐒「ちょっ、忘れた頃のきびだんごネタっ!ヤバいマジワロタ」
そんなこんなしてるうちに・・・
現場はまた状況が変わりました。
🦆「あーパトの音聞こえるなー、ケーサツの応援来たかな~?」
ケーサツさんは、応援が来たようです!
正義の味方が増えました!
🦆「今、着いた一台から、ケーサツ降りてきた~。なんか先発隊と話してるな~?」
🐒「もしかして、1台ずつ乗せられるパティーン?」
🐕「1人1台かぁ~!贅沢やん!公的費用使いまくりじゃん!!!」
🦆「ちょ!だから!笑かさんとって!!!」
ケーサツさんが粛々と手続きを開始してるその間にも、桃野郎とオーガはバチバチにやっているようです。さすが迷惑者です、KYなのでしょうか。
桃野郎はオーガに向かって口上を張り上げてるし、
オーガはコスプレ的な桃野郎を小馬鹿にしてるし、
ケーサツさんは面倒そうに連絡処理してるし、
三つ巴カオスど真ん中です
その中でも、最初に動いたのはケーサツさんでした。
🦆「ちょ、パト2台、後部座席のドアあけた!」
🐒「あ、ついにその時が!?」
🦆「キター!オーガ押し込まれた!」
🐕「ケーサツぱねぇ!」
🦆「あれ?意外と抵抗しねーなー?」
🐒「むしろ、通報と連行に慣れてる可能性」
🐕「パトカー何回目なんやろ?」
3匹がオーガ考察をしている一方、
桃野郎の様子はといいますと。
🦆「対して、桃野郎の抵抗具合ったらねーなw」
🐒「こっちは初めてかな?」
🐕「まあ、正義の味方って思い込んでるからじゃね?」
🦆「どっちかっつーと、桃野郎の方が厄介だな」
🐒「オーガは、悪役自認アリなんやろな」
どうやらオーガは、多少は空気を読めるようです。
🦆「あーあ桃野郎、すっげー抵抗してるから、背負ってる旗がボロボロじゃんよ」
🐕「ボロ太郎・・・(ボソッ…」
🐒「イヌぅぅぅ!ぶっ込むタイミング!!!」
抵抗に抵抗をした桃野郎は、公務執行妨害となったのでしょうか。
手錠らしきものをかけられてしまいました!
オーガは空気が読めると言うよりは、頭が良いのでしょう。
状況を把握し、どうしたら早く解放されるかを瞬時に考えたのです。
一方、桃野郎は尚も抵抗します。
やっぱり、きびだんごには何かが入っていたのでしょうか?
もしくは事前に何か、かっくらってたのでしょうか?
『正義の味方』の見る影もありません・・・。
ボロボロの姿で、無理やりパトカーに押し込まれました・・・。
迷惑者2人を捕まえたケーサツさんは、堂々と回転灯とサイレンを鳴らし、2台仲良く連なって、署へと帰っていきました。
🦆「あーあ、パトカー2台行ったわwww」
🐒「いやぁ、ケーサツさま、おつかれぢゃん!」
🐕「いやまぁ、今からまた、署の方で忙しいんじゃないの?頑張れ!負けるな!ケーサツ!」
こうして3匹は無事に、桃野郎とオーガの対決?を見届けました。
3人は(笑いすぎて)とても晴れ晴れとした表情です!
とりま、鬼ヶ島地区には、変にイキっているオーガは(今は)居なくなりました。
ついでに、正義の味方の筈の桃野郎も居なくなっちゃいましたが・・・
何はともあれ!
3匹は、愛と知恵と行動力で乗り切ったのです!
これこそ、本当の勝利です!
「高みの見物」という名の!
あら?3匹はそろそろ〆に入るようです。
🦆「さーてー、ここに居てもしゃーねぇし、そろそろ戻るわー」
🐒「せやなー!お疲れじゃん!気をつけろよー!また変なの見つけんなよ!!!」
🦆「脇目もふらずに帰るわ!」
はたと、イヌが思いつきました。
🐕「あ、なーなー、その前にさ、なんか言うことあるやん?」
🐒「お?・・・あー!」
🦆「予想ついたわ~」
🐕「だろ? じゃ、せーの!」
🐕🐒🦆「これにて一件落着!!!」
🐕「とか、言ってみる~!」
イヌのチャットで、3匹はホンワカした空気が流れましたとさ。
🦆「おつもも!」
🐒「おつおに!」
🐕「おつさつ!」
とりあえず、まあ、ね?
めでたしめでたし
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