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「良も持っていますよ、もちろん公に届けなど出していません」
意外な言葉に息を呑んだ。ならばと思い当たる、先日はいかにも小石を投げつけたような素振りだったが、実は拳銃を撃っていたのか──それを見せまいと、しっかりと抱きしめてくれていたに違いない、そんなことすら気遣いだと思えば、笑顔がこぼれる。
「良と同じ世界へと言うなら、こういうものを人に向ける必要があります。あなたにできますか?」
「はい!」
聡美は元気に返事をしてしまう、これで良の言い訳を潰せるとのだと思えば嬉しくなっていた。
「まずはテストと行きましょう。この弾倉には5発入っています、1発でも的に当たれば合格です」
「1発でいいんですか?」
それならなんとかなりそうだ、聡美は躊躇なくそれを手にした、ひんやりとした金属はずしりと重かった。
その頃、良が店に入ってきた。
「良!」
入るなりカウンター内の工藤が大きな声で呼ぶ。良は手を上げ挨拶をしたが、歩みが不自由な工藤が激しく手招きするのを見て足早に近づいた。
「よう、どうした、つか鈴木さんまだか」
鈴木に呼び出された、鈴木はいつも早めに来るのが定番だが珍しくその姿がない。近づきながら聞くと、工藤ななおも手招きをしている、その顔が青く固まっていることに気づく。
「どうし──」
「鈴木さんが田端を連れて行ったっ」
「──は?」
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