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「あの~。もしかして、ここの方ですか」
「ええ。いかにも」
「やっぱり、このアパートでしたか。さっきから何度も前の道を通り過ぎたのに、全然分からなくて。さすがに不動産屋へ確認の電話を入れようかと思いましたよ」
「それは、ご苦労だったねぇ」
俺は、今年の4月に、地元・静岡の清水から上京することが決まっている。
今日は合格をもらったばかりの大学の手続きを早々に終え、少しでも早く新生活の拠点を探そうと、大学の最寄り駅近くの不動産屋にふらっと立ち寄った。
もちろん、いくつかの物件を比較してから部屋を決めたい。だから一軒目の不動産屋には、相場調べと偵察のつもりで入った。
なのに、近くの大学に通う事と物件の条件を軽く伝えたら、有無を言わさず渡されたのが、この旗竿地に建つアパートのチラシだった。
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