第19話 ノンフィクション率 98%

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 今年も寒い。  しかもよく雪が降る。  もともと寒くても雪は降らないこの地域では積もる事はまれで、一年に一度降れば子供は大はしゃぎだった。  ふと見上げれば、今もまた積もらない雪が降り始めている。 『寒いなぁ』と仕事の手を止めて眺めていたら突然、妹の声が脳裏によみがえった。 雪が~降る~🎵 私は寒い~🎵 (原曲;雪が、降る~🎵 あなたは、遠い~🎵) 「ぶはっ!」  思い切り吹き出していた。  他に人がいなくて良かった。  原曲は男性歌手で、確か別れた女性を思いしっとりと重厚に歌い上げていた名曲だったと思う。  当時の妹はそれをパロッたのだ。  確かもう20年以上は前だ。  その日も寒くて家の中、各々のんびりすごす中であの子は突然重々しく歌い出した。  歌い出しを聞いて、えらくまた渋い曲を選んだな、と家族も思っていたのだろう。だから『私は寒い~🎵』の下りで全員が吹き出して、『そのまんまやん!』と笑い転げた。  よく憶えていたな、あ、いかん。ちょっとツボった。顔が笑う。  本当に一人の時で良かった。  吹き出し笑った状況に感謝しながら仕事を続ける。  後は片付ければ帰宅できる。  夕方になれば疲れてぐったりしがちだが、今日は思いがけずに笑ったからか気分が良い。  昔も今も言葉遊びが上手い妹に感謝を   (合掌笑) 【了】
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