9話

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9話

新居を見つけてから1か月が経ち、いよいよ引っ越し当日になった。 今日まで凄くバタバタだったなあ……誰かと暮らすって想像していたよりも大変。お互い1人暮らしが長いのもあって拘りもあるし好みも違うし、家電1つ取ってもどっちのを使うとか新しく買うとか、本当に色々決める事や買う物があってお金も時間もかなり使った。 そんなちょっと大変だった日々を思い出している内に、頑張って荷造りした荷物が引っ越しトラックにどんどん詰め込まれていく。全て詰め込まれた後、荷物より一足先に新しい家に行くと、部屋の中にはすでに冬也さんの姿と段ボールの山があった。午前中は冬也さん、昼過ぎに私の荷物を運び込む予定になっていたから、予想通りの景色ではある。 「お疲れ様です」 「ああ、お疲れ。荷物予定通り着きそうか?」 「はい。そういえば、もうこんな時間ですけど、冬也さんお昼ご飯食べました?」 「いや、それどころじゃなかったな」 「やっぱり。そうだと思って、コンビニでサンドイッチとおにぎり買ってきたので、一緒に食べませんか?」 コンビニの袋を前に掲げると、少し驚いている様子の冬也さんに見つめられた。もしかして、こういうことするの意外だと思われてる? 「気を使わせて悪い。ありがとな。折角だし、そうさせてもらうか。この後しばらく食べる暇無さそうだしな。ソファー座れるようにしてるから、座って待ってろ。これだけ片付けたら行く」 「分かりました。準備しときますね」 まだまだ片付いてないリビングに入ると、真新しいソファーが無造作に鎮座していた。このソファーも新しく買った物の1つで、3人掛けのオットマンが付いたソファーは、形はすぐ決まったのに色で散々迷った一品。冬也さんはダークカラーで私はベージュ推し。色々相談した結果、最終的にグレーになった。どちらかというと冬也さんの意見を採用した形だけど、実際部屋の中に置かれているのを見るとグレーで正解だったと思う。 「座ってろって言ったのに、どうした?」 「この色にして正解だったなって思って見てたんです」 「そうか。陽菜に妥協させたみたいで悪いと思ってたから、そう言ってくれて良かったよ。俺もこの色で正解だったと思ったから、同じだな」 同じか……なんかいいな、そういうの。好みが違っても、最終的に2人で選んだ物をお互いに良いって思えるって、ちょっと凄い事だよね。 少し嬉しくなりながら、2人並んでソファーに座った。
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