第一話 ふしぎ探偵、登場!

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第一話 ふしぎ探偵、登場!

「事件だー!!」 バーンッ! マンガならたぶんそんな効果音をつけて、その女の子は、勢いよく教室に飛び込んでくる。 ぼくは、きさらぎ小学校四年一組、彁幻太郎(げんたろう)。 そしてこの女の子は、隣のクラスの国府田(こうだ)はてなちゃん。 そう、何を隠そう、はてなちゃんは──。 「……今度はなに? ふしぎ探偵」 「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた幻太郎助手」 「いや助手じゃないってば」 ふしぎ探偵とは、幽霊・都市伝説などの、超常現象や噂を解決する、そういう探偵らしい(はてなちゃんが勝手に言い始めた)。 ぼくのツッコミを聞かないフリして、はてなちゃんはしゃべくり始める。 「お金持ちの幽霊が現れたぞ!」 「……お金持ち?」 「そう、トシコさんって言うんだけど……」 はてなちゃんは、神妙な面持ちになった。 「そう、これは、友だちの友だちの話、らしいんだけど……」 「誰から仕入れた話なのかさっぱりわからないところが一番怖い」 「貯金が大好きな人がいてね、通帳にお金を貯めてたんだって」 「ふうん」 「そしたら……、なぜかたまに数円ずつ、知らない誰かが振り込んでくれるらしいんだ……。 『トシコ』って、名前だけ残して……」 「……」 「それで、周りの人に聞いたら、なんとたくさんの人に同じ現象が起こっていたらしい! やっぱり名前は、『トシコ』……」 「……」 「目的がわからないところが怖いと思わないか!? もしかしたら、あとでまとめて何百倍ものお金を返せって言われてしまうのかもしれないぞ! これは調査のしがいが……!」 「利子(りし)」 「へ?」 「利子だよ、それ。トシコじゃなくって。利息ともいうけど」 「……え、それ、じゃあ、銀行のお姉さんの幽霊ってこと……」 「幽霊じゃないってば。お金を預けてたら勝手につくやつだよ」 はてなちゃんはまじまじとぼくを見つめた。 そして小声で、「きゅー、いー、でぃー……」とつぶやく。 放課後の教室に、ひゅうっと、夕暮れの風が吹いた。気がした。
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