完璧な計画

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 翌年、春樹は七年前の志望校に首席で入学した。そこからは次々に飛び級を果たし、一年後の今は自分のラボを立ち上げて研究助成金まで獲得している。 「そりゃ、一人でタイムマシンを作った人ですもんね」 「そうは言っても、色々我流だったからな。今は理論を体系化するのに苦労してるよ。データ集めたり、論文書いたり」  私たちは、近くのカフェでコーヒーを飲んでいた。タイムマシンの一件以来、外で会う機会も増えている。 「なんだか、春樹に置いていかれちゃったような気がするな」  私はため息をついた。 「春樹の七年は、全然ブランクなんかじゃなかったよね」 「そんなことないだろ。千佳はちゃんとした社会人だし、おれはローンも組めない学生だし」  珍しく殊勝なことを言う春樹がマグカップを口に付ける。そのままもごもごとつぶやいた。 「あのさあ、前に告白されたサークルの先輩って、まだ付き合ってんの?」  私は顔を上げた。春樹の表情は見えない。口もとはマグカップで覆われ、立ち上る湯気で眼鏡を曇らせているからだ。  ……何年前の話よ。それに私の話、聞いてたんだね。  あのとき、春樹が基板をいじるふりをして聞き耳を立てていたかと思うと、何だかくすぐったい。私もカップを持ち上げて、笑みを隠した。  もうちょっと焦らしておこう。こっちは七年も待ったんだから。
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