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「ああ、アレ。もういいよ。私そんなに気にしてないから!」
「でっ、でも、私、あなたに向かってあんな心ないことを・・・」
「あの人のことを助けることができただけで私はもうそれだけでも満足なんだから。だからセツお姉ちゃんも、過ぎたことにあんまりクヨクヨなんかしないで。」
ニッコリと笑いながらそう励ましてくれるユウを見て、セツはこれ以上掘り返すことは止めることにした。
「ねぇ、ユウ。」
「なぁに?」
「あなたの言ってることが正しければ、私が犯した罪も生きて償うことができると思う?」
セツはここではっきりさせたかった。
自分が過去にした、取返しのつかない行いが果たして精算することができるのかを。
「できるよ。セツお姉ちゃんなら絶対にできるよ!」
返って来たのは、何となく想像がついた答え。
それだけでは、セツの心の内に渦巻いている不安を払拭させるに足り得なかった。
「でっ、でもねッ!もしも、もしもだよ。あなたが衝動に負けた私に殺されたとして、そんな私がいつまでも生きているとしたら、あなたは一体どう思うの!?」
セツは目の前にいる子が、自分が殺してしまった者ではないことなど分かりきっている。
だがここでこの子にこの問いを投げかけなければ、彼女の気はとても収まらなかった。
俯きながら深く考え込んだ後に、ユウは自分の考えを述べ始めた。
「そうだね・・・“大丈夫。”って言ってあげたい、かな?」
「え・・・」
「だって私の好きなセツお姉ちゃんがそんなこと絶対にするはずがないに決まってるもん。きっと後でとっても後悔して悲しんでしまうから、とっても心配になっちゃってどうにかして“大丈夫だよ、泣かないで。”って言ってあげたいな・・・」
変わらず笑顔でそう言ってみせるユウを見てセツは僅かだが救われた気がした。
その微笑みが、今は亡き妹のものと重なったように見えたからだ。
「じゃあね、罪を償うには、私は一体何をすべきだとユウは思う?」
「ごめんね。それについては私には分からない・・・その方法は、セツお姉ちゃんが自分で、見つけていくしかないんじゃないんかなぁ・・・」
「・・・・。そっか・・・」
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