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「目覚めた時にはアダムの姿は無くて、私は彼を捜しました。たどり着いた場所には多くの信者の死体が転がっていて建物の入り口までそれは続いていました」
険しい表情で語るレイガンの眼にはその時の光景が蘇っているのだろう。
話を聞いていた雪十も胸が潰れるような苦しい気持ちになった。
「ドミノ倒しのようになって死んでいる信者の先にアダムは死んでいました。憧耀が殺したことは明らかでした。アダムが持っていた箱を手に入れるために憧耀はアダムと彼を庇う罪のない人たちも全員殺したのです」
すでに氷の溶け切った残りの酒をレイガンは一気に飲み干した。
「その後の調査で箱を託された信者が封印を施せる術者の元へと無事に届け、憧耀の策略は阻止されたと知りました。アダムの死の真相は秘密にしたまま、彼を教団の象徴として私がナイト教団のトップに立ったのです」
レイガンの話に雪十はショックを隠し切れなかった。レイガンの恨みは正当でアダムの行いは正義だった。憧耀に情状酌量の余地はなくて何も言葉が浮かばなかった。
「雪十」
立ち上がるレイガンは足元がおぼつかずテーブルにぶつかって床に膝をついた。
心配する雪十に跪く体勢になったまま、レイガンは切なそうに彼を見つめた。
「顔も声も何もかも、あなたとアダムに似ているところはないのに私はあなたに惹かれた。あなたの中にあるアダムと同じ善の心にー」
「レイガン…」
「憧耀の所へなど行かせたくない。私の傍に居て欲しい」
二の腕を掴む力は強くて思わず顔をしかめるもレイガンの力は緩まなかった。
「あの時…アダムに素直にそう言えたなら、彼を死なせずに済んだのでしょうか?」
レイガンの問いが雪十の胸を締め付ける。
危険なものだと分かっていながら純粋に惹かれて行くアダムに何も言えなかった。
嫉妬心を露わにして彼に縋り付くなどプライドが許さなかった。
時間が経って今なら分かる。愛している、ただその一言だけ伝えれば良かったのだ、と。
うな垂れるレイガンに雪十は声を掛けた。
「アダムはもう居ない。でも俺は、ここに居るからー」
まだ目の前で生きている雪十を見つめレイガンの瞳に光が灯る。
頬に触れると雪十は素直に目を閉じた。
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