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【 プロローグ 】
2017年9月11日。
この日、私はニューヨークのブルックリンに来ていた。
空を見上げると、今日は白と灰色の雲の目が、まるで高いビルの間からこちらを見下ろしているようだ。
生まれてから17年間、日本から出たこともなかった私が、異国の地ここアメリカへ一人やって来ている。
手には、シャンパンゴールドの小さなキャリーケースを持って。
地下鉄でレキシントン・アベニュー線のBrooklyn Bridge City Hall駅から出ると、私と同じ観光客と思われる人たちが、会話をしながら楽しそうに同じ方向へと歩いている。
私もその方向へ。でも、私だけ今はひとりきり……。
真っ直ぐな道をしばらく歩いて行くと、あの歴史ある橋が目の前に見えてきた。
少しだけ青空も、私にサービスをして、顔を覗かせてくれる。
橋の手前に着くと、その歴史あるゴシック風のデザインが目に飛び込んできた。
思っていたよりも古い印象だが、いくつもの網目状に編まれた丈夫そうな鋼鉄のワイヤーが、この吊り橋を長年支え続けて来たのだろう。
少しだけ橋に触れてみる。
ゴツゴツした丸い突起が、指先を通じて不思議と歴史を感じさせてくれた。
橋は2層構造になっており、上層部は歩いてこの橋を渡ることができる。
その上をキャリーケースを引きながら一人歩いていく。
橋の半分ほど来たところで振り返り、スマホで写真を1枚撮った。
今日、私は初めて
ママに反乱した……。
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