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会社には、電話で休憩中に体調が悪くなったと言い、早退させてもらった。
電話に出た事務係の安居さんは、心配そうに「そうなんですね、お大事に」と言ってくれたが、明日課長の渡部さんがなんて言うかと思うと気が重い。
渡部さんは俺のことを人間とは認めていないようで、何かあればすぐに俺への攻撃態勢に入る。
愚図な奴は『普通の人』よりも寝ずに努力して、頭を動かしてもっと仕事をしろ、と口にする。
が、俺はこんな考え方をする生物がいるのだなと思って気にしてないし、今回は仕方がない。
あれから、少女――ミオリがずっと俺にくっ付いて離れないのだから。
「ねぇ、シマ。なんで来なくなったの?」
俺は答えなかった。
さっきからこの調子だ。
「なんで何も言わないの?」
俺は、やはり何も答えなかった。
「ねぇ、無視されると傷付くんですけどぉ?」
俺がちらりと振り向けば、ミオリはクスクスと笑った。
「やっぱり分かってたんだね。ほんとシマってツンデレさん」
彼女のその笑顔は、変わらなかった。
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