未来占い学入門

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 ―世界は赤の皇帝、青の女帝、白の女王、黒の王の四人によって四つの領域に分断されていた。  それぞれ赤の皇帝は赤鳥(セキチョウ)帝国、青の女帝は青蛇(セイダ)帝国、白の女王は白猫(ビャクビョウ)王国を、黒の王は黒亀(コッキ)王国を統治していた。それぞれの元首は互いに牽制し合い、自らが世界を統一するに等しい人物であると主張した。  それぞれの国がそれぞれの領土を拡大しようとして、しばしば争いが起こった。この四つどもえの争いに勝利するために、権力者たちは優秀なシャーマンを集めた。赤の皇帝に仕える巫女は紅蓮(ぐれん)不死鳥(ふしちょう)を呼び寄せ、青の女王に雇われた呪術師は蒼天(そうてん)毒蛇(どくだ)を召喚する。白の女王と契約を結んだ魔女は白雲(はくうん)怪猫(かいびょう)を手懐け、黒の王の見込んだ錬金術師は漆黒(しっこく)巨亀(おおがめ)を錬成した。ただ、この魔物たちの一匹でも暴れようものなら、大勢の犠牲がでるために、それら四体の化身は実際に戦場へと赴くことはなかった。かつて白の女王の妹の戦乙女(いくさおとめ)が、白雲の怪猫の仲間であるキティーとチシャーの鎖を引きちぎってしまったことがあるが、その二匹が解き放たれた火の国は、自らの炎よりも凄まじい業火によって焦土と化したという。  そこで苦肉の策として四つの大国は、赤壁と青塞、白城と黒塁によって世界を四分することにした。区切りの外には入会地(いりあいち)であり、世界中の人類すべてのための土地である極地と、誰のためでもない、強いて言えば動植物や世界そのもののためにある空白地帯と、小国が統治する領域があった。小国の中には四大国の区切りの中に入りそれぞれの大国の加護を得るものもあれば、区切りと区切りの間で板挟みにあっているものもあった。  この世界四大分割政策は功を奏したように思えたが、しばらくして大国の統治者はなんとしても自国の領土を拡大できないかと画策するようになった。  他国に知れることのないよう少しずつ少しずつ壁を移動する国もあれば、極地や空白地帯にこっそりと基地を造る国もあった。さらに高くそびえる壁塞、城塁を越えて天に要塞を構える国もあり、さらには様々な口実をつけて、区切りの外の小国を攻め入る国もあった。そういった小国のいくつかは、大国によって二分あるいは三分、四分され、大国同士の競う将棋盤にされたという。中には千日手(せんにちて)となって勝敗がつかず、そのまま今日(こんにち)に至る分断された小国もあり、また玉の持ち手が歩をひとつも動かさずに投了してしまった局面もあるのだとか。―
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