395人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
ポート子爵家令嬢ルクリア
私はポート子爵家の長女として生まれた。
母譲りの治癒魔法のおかげで、王立魔法学校へ通えている。
治癒魔法の使い手は少ないから重宝されるのだ。
我が子爵家はそれほどお金持ちじゃないので、入学案内が届いたときには有難かった。王立の学校は授業料が不要だから。
我が家は男子相続なので、弟は必ず魔法学校にやらねばならないし。
美形の妹もまた、良い婿探しのために魔法学校へ通わせたかった。
・・・あの頃、私自身は学校へ行くのはあきらめようと思っていた。
学校は13歳になる年から17歳になる年まで。
それまでは家庭教師をつけて家で勉強させるのが、一般的な貴族のやり方だ。11歳の妹と。5歳の弟は風魔法が使えるが、ふたりとも飛びぬけた才能とは言い難い。
私は来年卒業で。妹は入れ替わりに入学する年齢だ。
入学のおおよそ半年前。国中の子どもたちは、魔法の適性検査を受ける。
つまり、妹は今年受ける。
検査結果によって、あちこちの魔法学校から入学案内が来て。その中から条件のいい学校を探すのだ。
私立校はもちろん、かなりの費用がかかってしまう。
公爵家の方々が通うディントゥン魔法学校なんかだと、ひと月の授業料ですら、我が家のすべてを売り払うほどの金額だろう。
せめて伯爵家の方が通う程度の学校に入れればいいのだけれど・・・。
私は、卒業後には王宮で働こうと決めていた。
数年に一度、王宮の魔法部では求人を出す。その年にちょうど卒業しない限り、勤めることはできない。・・・通常は。
5年間の学校生活の間、首席を通し。なおかつ魔法力が強ければ。求人の無い年にも、王宮勤めが叶う。
入学するなら、必ず王宮に勤める。私はその覚悟で学校に入った。
少しでも弟妹の学費を稼ぎたいんだ。
我が家は使用人も少ないので、私は弟妹の面倒を見ている。
・・・ごめんなさい。
・・・嘘です。
いや、確かに使用人は少ないんだけど。
実際はメイドたちに止められるのを押しのけて。面倒を見ているというべきだ。
だって。
ふたりともとっても可愛いのだ!
ふたりはよく似ていて。
明るい茶色の髪はふわりとウェーブがかかって。瞳は淡いブルー。目はぱっちりと鼻はすっと通って小さい。それほど高くない鼻が余計にかわいらしさを引き立てている。
妹はふっくらとした唇で。もうすでに女性らしさがある。私よりずううっと色っぽい。上目遣いに微笑んでおねだりされると、どんなわがままも聞いてしまう。・・・まるで小悪魔!
弟は口角がしっかり上がっていて。いつだって微笑んでいて。まわりを明るくしてくれる。
そのうえ、最近ではしっかり礼儀を覚えてきてて。
あのふっくらしたほっぺで一生懸命。紳士のようにふるまう姿の可愛いことと言ったら!
ふたりのためなら、私はなんだって出来る。
きっと優秀な成績をおさめて。王宮に勤めてみせる!!
最初のコメントを投稿しよう!