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「プレゼント買う時、俺もお揃いで買おうかなって言ったら、柚葉すごい困った顔してたろ。あれ、結構ショックだった」
「え? 私、困ってた?」
記憶にない。
初めての誕生日プレゼントは確か――。
「広田にお揃いの腕時計をねだられた時は興味持てなかったのに、柚葉とはお揃いの物持ちたいと思ったんだよな。あんまり会えなかったから……かな。でも、柚葉にはそういうの重いのかもとか思った……な。まぁ、柚葉に似合うもので俺も持てる物って、そんななかったかもしれないけ――」
「――違う! あれは……違う!」
思い出した。
これといって欲しいものが思いつかなかった私は、和輝と街を歩いて、百貨店のアクセサリー売り場で立ち止まった。
彼氏から指輪やネックレスを買って貰う友達が羨ましくて、思わず。
けれど、私は普段からアクセサリーをつける習慣がなかったし、自分からねだっていいものかと悩んでいた。値も張るし。
ピアスならそれほど高価でないものもあるが、私は穴を開けていなかった。だから、ピアスを眺めながら穴を開けようかと考えていた。
そこで、和輝が言ったのだ。俺もお揃いの買おうかな、と。
「困ったのは、わざわざ和輝にピアスの穴を開けさせるのが申し訳なくて……」
「マジか……」
困った顔の意味を知った和輝が、私に触れていない方の手で顔を覆った。
「俺、柚葉はキーホルダー見てると思ってた」
「キーホルダー?」
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