chapter01. お隣さんをたすけました。

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 以前ネットで見た力を入れなくても掴まれた手を解くという不審者撃退法を頭の引き出しからなんとか取り出しながら手を外し、お隣さんのポケットを探りGのつくブランドのキーケースを発見し私の部屋に似た鍵で302号室を開け、私よりも遥かに大きい巨体を玄関横に立てかけておいた台車になんとか乗せゆっくりと部屋に入った。足を引きずってても申し訳ないがこの際放置することにした。  青とグレーで統一されたキッチン前を通り抜け寝室の部屋を開けてベッドの前に台車をつけエアコンをつける。脱衣所に行きタオルを数枚とドライヤーをとり、コンロの上のヤカンに水を入れて火をつける。  ぐったりしているお隣さんの着ている服をパンツも一緒に脱がし濡れた頭をタオルで拭きドライヤーで乾かし濡れた体を拭く。  沸いたお湯をボウルに入れ水を混ぜ火傷しない程度に薄め、タオルを入れて絞りベッドまでボウルごと持って戻り体を吹き上げる。 下半身は死んだお父さんの介護と同じだとなんとか割り切って拭き上げる。熱がこもりやすい場所で拭かないとずっと気持ち悪いままで治るものも治らないのだと教えられたためで邪な気持ちは一切ない。普段なら絶対やらない。  クローゼットからスウェットを見つけ着せてベッドに上りお隣さんの両脇をもってグイっと体重を後ろへ倒し渾身の力をつかってベッドに寝かせる。  ここまでで私は汗はだらだら、息はぜいぜいと上がっている。しんどい。  煙草を吸うのを我慢しているのもあり若干イライラしているが仕事だと割り切って何とか押し殺しお隣さんに布団をかけスツールの上にお隣さんの鍵や財布などをすべて置き、脱がせた洗濯物を脱衣所の洗濯機に放り込み洗剤を見つけて入れ、スイッチを押す。  自分の部屋に戻り、買ったものを冷蔵庫などに手早く片付けて冷凍庫から氷枕、部屋の小物入れから冷えピタと市販の風邪薬、体温計をその辺の紙袋に入れ隣に戻りまず熱を測る。  ピピっと音が鳴り取り出して確認すると 「・・38.9・・・高いなぁ・・。」  思わずため息がでてしまった。熱が高くて心配になるものの、体を動かしタオルにくるんだ氷枕を頭の下に入れ冷えピタをおでこにはる。  寝室の扉を閉めて自分の部屋に戻り土鍋を取り出し だし汁、酒、しょうゆ、みりん を入れ火にかけ沸騰させる。朝の残りのご飯を炊飯器から取り出し鍋に入れて煮立たせる。  弱火にして溶き卵を円を回し入れ固まりだしたら軽くかき混ぜ火を止め細切れにしたねぎを散らして蓋をする。  鍋つかみを両手にはめて302号室へ行き一度キッチンにに置いて冷蔵庫にあったスポーツドリンクを取り出しお隣さんのもとへ向かう。  首に手を当てるとまだ暑いが先ほどより少し顔色がよくなっており、濡れタオルで汗を拭きとり声をかけて起こす。 「お隣さん、起きれますか?」  顔をペチペチと軽く叩き声をかけると眉間に皺を寄せてうっすら目を開けたお隣さん。  非現実的で全く気にしてなかったがよく見たらかなりのイケメン。 形のいい高い鼻に薄い唇、釣り目だけど形のいい目元、喉元は汗も相まって色気むんむん。  首筋にフェチを感じるのは私だけではない・・・はず。 少し照れくさくなりつつも首を横に振って邪念を捨てて声をかける。 「雑炊作って来たので食べて薬飲んでください。 辛いかもしれませんが少しでも おなかに温かいものを入れないと治りも遅くなりますよ。」 「・・・・ん・・・」  ゆっくりと体を起こすお隣さんを支えスポーツドリンクを渡し一度隣の部屋に行きローテーブル鍋敷き代わりに少し濡らしたタオルを置きキッチンから土鍋と茶碗と蓮華を置く。 土鍋の蓋を取るとだしのいい香りが昼ご飯がまだな私の胃袋を刺激して音を鳴らしそうだ。   盛り付けた雑炊を茶碗に盛りお隣さんに差し出す。
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