社長命令

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初めて使う、妊娠検査薬。 どれくらいで陽性のラインが浮かびあがるのだろうか?と、思ったのは一瞬で、 使用した瞬間、ハッキリくっきりとその線が浮かび上がった。 「どうだった?」 リビングに戻った私にそう声を掛けて来るのは、岡崎社長。 「あの…これ」 私は、その陽性の検査薬を、二人に見せる。 「やっぱりね。 じゃあ、文乃ちゃんはみー君の横にでも座って」 そう岡崎社長に言われ、私と同じように永倉副社長もゲッって顔をしている。 私は渋々、ソファーの永倉副社長の横に座った。 すると、岡崎社長はそんな私達の前へと座ると、 「みー君、どうするつもり?」 そう切り出して来る。 「どうって…」 永倉副社長は、本当に困っているようで、 それ以上言葉が続かないみたい。 私も、もし同じように訊かれても、答えられない。 どうしよう、って。 「子供が出来た以上、二人は結婚しようか」 「「結婚!?」」 私と永倉副社長は、ハモッてそう訊いてしまう。 だって、結婚なんて、突然過ぎて…。 「あの、結婚って突然過ぎません? まだ妊娠が分かった段階で。 それにまだ…」 そう口を閉ざしたけど、今、堕ろす事を考えた自分にゾッとした。 だけど、産む、とも言えない。 「まだ、何? もしかして、文乃ちゃん、産まない気?」 いつも優しい顔をしている岡崎社長なのに、 今はとても厳しい表情で。 「あのさ。なんでそんなに一枝君、口出して来るの? 俺と文乃の問題なのに。 そりゃあ、俺の子ならば、一枝君も他人ではないけど」 確かに、永倉副社長の言う通りかもしれない。 今回、岡崎社長の前で私があんな風に体調を崩して、そのまま、乗りかかった船みたいな感じかもしれないけど。
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