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師匠は。
「柔は剛を制覇すると言う、言葉を知ってるかい。剛は角ばった石ころだと思えば良い、柔は水、つまり石と石をぶつけたら、砕けて丸くなる。これが河原の石だ。川で剛と剛をぶつけ合い丸くなる。砕けた石は海辺へたまる。今、君のやっている事は石と石をぶつけ合う事をしてるんだよ。剣で丸太の勢いを押し返す腕力は今の君にはない」
「あっ」
俺は丸太の一撃をさっと転がって、丸太の後ろに当てた。
「うん。その調子、その調子。闇雲に剣を振るだけが正解じゃない。私が言いたかったのは、今の君の行動は柔だと言いたいんだ。もっと簡単にすると、トゲだらけの振り子だったら、ぶったぎりたいかい?」
「えっ、そんなの痛いだけじゃん」
師匠は真面目に。
「うん。私もそう思う。あくまで仮想の敵をイメージすると言う、シャドウトレーニングなんだぞ。このシャドウトレーニングに君の想定するものが増えれば、増える程、より難易度を上げられる。そう、それは強敵をイメージや体験すれば、するほどね」
俺はトゲ振り子よりはマシと思って、丸太に一撃を当てるべく、丸太を追い掛ける。逃げられたら追い掛けても、俺の速度じゃ追い付かない。
あぶなげな俺の訓練をじーっと眺めてる師匠。師匠はたずねないと答えないのが、いつもだけど、今日はやけに教えてくれるな。
んー、俺が黙々と丸太トレーニングをしてるのを、邪魔しちゃいけないからかな。
だんだん解って来たぞ、丸太の正面は魔物の攻撃、逃げる丸太は距離を置く魔物。
へー、これがシャドウトレーニングか。
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