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それに聞き上手で、仕事や人間関係の相談をしても的確なアドバイスをくれるから最近は店に来る度につい悩みを漏らしてしまう。
しかし一方の朝倉さんは、会えば普通に話してくれるけど、相変わらず言葉の端々に棘があるから傷つくことも多いんだよね。
「あっそ、俺と仲良くする気はなくしたんだ」
「拗ねてるんですか?」
「あんたな、調子乗ってんなよ」
むかつく、と言って頬を容赦なく抓られた。
「何するんですか痛い…!」
「わがまま言って欲しいだなんだ言っといて結局忘れてんだよ、いい加減な奴」
「そんな、忘れてないですよ、私なりに一生懸命努力してる最中じゃないですか…」
「努力を感じないね」
朝倉さんはコットン素材の白いシャツをさらりと着ただけのシンプルな格好なのに、いつも通り恍惚としてしまうほど秀麗だ。
でも今ばかりはそんな綺麗な顔すら憎たらしい。
「…靴でも舐めれば満足ですか」
「その奴隷思考なんなの?靴舐められて俺は何を思えばいいわけ?」
「だって努力を感じないって、精一杯心を開いてもらおうと頑張ってる時にそんな風に言われたら悲しいんですよ!」
「なら別に来なきゃいいのに」
仕事に支障があるわけじゃなし、とすげなく言われると、なんだか余計に悲しくなってしまった。
朝倉さんは仰る通りレコーディングだってちゃんと弾いて下さるし、スケジュール通りに動いても下さるので、アルバム制作の方の進捗は順調そのものだ。
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