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何故か代役を務めてやったのに廉介からは罵詈雑言を浴びせられ、まじでクソほど心狭いなとゲラゲラ笑わせてもらったし、あの時は珍しく穂香が怒っていた。
「またトラブル対応入ったら連絡していいぜ」
「うるっせえ、もう二度と頼むか」
「まじであれに関して感謝されても罵られる覚えはないんですが?理不尽かよ」
「てめえの日頃の行いだ、甘んじろ」
「今度こそちゃんと埋め合わせさせろよ、穂香」
「了解です」
そんな会話を最後に車に乗り込んでいった廉介と穂香を見送った。横で大人しく俺たちの会話のなりゆきを見守っていた栞は、「三人とも仲良いんですね」と呟きを落とす。
「まあ廉介とは特に無駄に付き合い長ぇからな」
「いつからのお付き合いなんですか?」
「高一の時だな」
残酷なまでに成績至上主義の高校で、三年間変わらず同じクラスだった廉介とは、苗字が織木と吉良なおかげで、三年間ずっと席順も前後だった。
あの頃から変わることなく苦労性で損ばかりの廉介を揶揄い倒して遊ぶのが高校時代の俺のライフワークだった。まあ正直今もそんなにやってることは変わんねえけど。
「…穂香さん、恋人いたんですね」
「そらあんな美人なんだから当然いるだろ」
駐車場から部屋に戻り、キャリーケースの荷解きは一旦放棄することにしてソファーに沈んだ拍子に栞がそんなことを言い出す。
まあ廉介と付き合い始める前はまるきり浮いた話のない女だったが、それは今さらいいだろう。俺も詳しくは知らないし、廉介だけが知っていればいいことだ。
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