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中学を卒業して1年くらいたった頃、公園のベンチに座っている松野さんを見かけた。松野さんは一人だった。僕はこれが最後のチャンスだと思い、松野さんの方へ歩き出した。
その時、制服を着た男子が僕を追い抜いて松野さんの隣に座った。
男子は背が高く、茶髪で、さわやかな感じだ。
男子が松野さんに話しかけると、松野さんは笑った。松野さんの笑顔を見たのは初めてだ。僕の胸が少し温かくなる。
2人はしばらく話してから、立ち上がり歩き出した。いつも一人だった松野さんの隣に誰かがいるのは不思議な感じだった。
本当は僕が隣にいたかった。でも、僕ではあんな風に松野さんを笑顔にできなかったかもしれない。
あの男子はきっといい人だ。
夕日が歩く2人を包んでいる。幸せの景色だ。
2人の姿がだんだん小さくなる。僕の心は色々な感情でごちゃまぜになる。
でも、これだけははっきり言える。
僕は、今日、やっと、卒業できた。
好きな人の幸せを願えた自分を少しだけ好きになれた。
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