吸血鬼とアンドロイドの怠惰な日常

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「でしたら、ヨーロッパやアメリカに引っ越しましょう。バイオレンスな日々が送れますよ、きっと」 「嫌よ。あいつらったら、変な呪文を唱えて、なぶり殺しにするのが好きなんだから。趣味が悪いったらありゃしない」 「左様ですか」 「それより、レイディ。お出かけの準備をしなくちゃ。そろそろ時間よ」  わたしは足早に、クローゼットの前に移動する。うしろからレイディもついてくる。  レイディがクローゼットを開け、本日の衣装を見繕う。 「お嬢さま、ウエストが――」 「言わなくていい」  腰まわりがきつくなったドレスに着替えさせると、レイディは次にわたしの髪をセットする。  吸血鬼は鏡に映らない。だから、こんなふうに他人の手を借り、身だしなみをしなければならない。  準備がととのい、わたしとレイディは連れ立って、住処のボロ屋敷をあとにする。 「今日もうんざりするほど、カンカン照りね」 「真昼ですし、夏ですからね。早起きすればどうですか?」 「無理な相談ね。夜行性には拷問よ」  外は、目がくらむくらいまぶしかった。青々とした空が広がっている。打ち水をしても一瞬で蒸発してしまいそうだ。  ギラつく太陽は、贅肉より怖い。浴びれば、焼け焦げてしまいそうだ。 「どうです? お嬢さま。いっそ、その贅肉を焼いてみれば。楽にダイエットできますよ」 「痩せる前に死んでしまうわよ!」  レイディのブラックジョークをかわしつつ、わたしは一歩踏みだす。  レイディが、わたしの頭上に日傘をすかさずあてがう。それでもなかなかに暑く、下手すればやけどぐらいはしそうだ。  そんな中、わたしたちが向かったのは、スポーツジムであった。
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