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「立美さんはもう一泊されるんですか?」
「はい、森下さんも?」
「いえ、これで帰ります。実家がこの近くで、久しぶりなので泊まっていくつもりです」
普段は東京のホテルに勤務しているという森下さん。田原には数年ぶりに帰ってきたそうだ。
「ご両親はきっと喜ばれるでしょうね」
「どうかな。両親は仕事人間で。明日も仕事にいくらしいんですよ。娘が久しぶりに帰ってくるのにひどいですよね」
ふふっと笑う森下さん。顔は嬉しそうだから親子関係は良好なのだろう。
「ご両親、お仕事忙しくされてるんですね」
「児童養護施設の職員なんですけどね。使命感の強い両親で、困ります」
児童養護施設。その言葉にドキンと胸が鳴る。
「あの、その施設ってくろしおですか?」
「はい。よくご存じですね」
わたしは、幼い頃その施設でお世話になったと話した。あんまり細かいことは伝えなかったけど。
「あした、もしお時間ありましたら施設に寄られたらいかがですか? 昔からいる職員さんも多いとききますし、施設長は当時からかわっていないと思います」
そっか……。あの頃の先生にまた会えるかもしれない。あしたは特に予定もないし、少し寄って行こうかな。
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