704人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ
▶︎80kg 破れたスカート
「いやあああー!」
お尻を手で隠すように押さえるけれど、私のお尻はこの前動物園にいたカバくらいに大きいから、全然手で隠れない。
私の声が店内いっぱいに響いた。
「ぶは、お前まじか。大傑作だわ」
苦しそうに腹を抱えて笑っているのは、閉店間際にケーキを買いに来た常連客の高木晴希。今日は珍しく女の子を連れておらず、一人で買いに来た。
「店長、早く佐藤に新しい制服出してやって」
店の厨房に入っていた店長の天宮薫が「どうした?」と言いながら顔を出す。
店長は私の破れたスカートを見て、黙ったまま目を背けた。
「て、店長、ごめんなさい」
「急いで替えのやつ持ってくるから待ってろ」
店長が足早に再び厨房のほうへ戻っていく。厨房を抜けて奥の、更衣室兼倉庫になっている部屋に行って、予備品を取りに行ってくれたのだと思う。
「お前って、可愛いパンツ履いてんのな」
「いやああ、見ないで!」
恥ずかしさで体が沸騰しそう。
今日のパンツはピンクのガーリーなやつ。体が大きい自分には似合わないって分かっているけれど、誰にも見られることがない下着くらいならと思って、好きなデザインを選んでいた。
不幸中の幸いで、お客さまが馴染みの高木さんしかこの場にいなかったのが唯一の救いだ。
最初のコメントを投稿しよう!