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門の前では、真名歌城内でよく演奏を奏でている者たちが、美しい音色を奏でている。
「北の国〜、北の国〜、那奈様のご入場です」
音色に合わせて、門の前で大声を出す家臣。
陽翔は、その様子を他人事かのように遠くから眺めていた。
「陽翔様、笑顔って言ったじゃないですか」
大きな庭園に今日のため用意されている椅子へ陽翔は腰掛けている。芳翠は駆け寄って、耳元でささやく。
「あぁ、悪い」
陽翔は苦笑いをした。
「まぁ、気持ちはわかります。だけど、作り笑いくらいはしてくださいね」
芳翠は活を入れるように、陽翔の肩を軽く叩いた。
「おい、芳翠、陽翔様と距離が近いぞ」
どこからともなく現れた陽翔の母である国妃が、芳翠へ強い口調で言い放つ。
「申し訳ありません」
芳翠は、深く頭を下げて、陽翔の座る椅子の後ろへと下がった。
「西の国〜、西の国〜、」
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