はじめての、キス

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「花里は今何やってんの?」 「チョコレートメーカーのラピスっていうところで受付やってるよ。高木くんは?」 「すげー有名なチョコレートメーカーじゃん。そういや花里昔っからよくチョコ食ってたよな。オレは今銀行の営業やって……って、うわっ⁉︎」 なんて立ち話していたら急に高木くんが背後から誰かにヘッドロックをかけられて、奇声を発した。 「よう、高木」 「戻って来ないと思ったら高木に捕まってたのか、羽衣は」 「とし、美乃梨」 高木くんにヘッドロックをかけていたのはとしで、そのさらに背後からひょっこり顔を出したのは美乃梨だった。 「いてーよ、榊!」 高木くんはギブギブと言わんばかりにとしの腕を叩く。 としこと榊 俊哉(サカキ トシヤ)。かつて私をいじめていたあの"としくん"だ。 薄茶の髪はふんわりセットされていて、整った顔立ちに少しやんちゃさを残してはいるけれど、しっかりスーツを着こなして纏う雰囲気はすっかり大人の男。 彼は中学でバスケを始めてから急にモテ出したけれど、今も絶対確実にモテてていると思う。 何てったってそのルックスで大手の紬出版に勤めているんだから、モテない訳がない。 美乃梨と同様小、中、高とずっと一緒だった腐れ縁で、私が大我たちに鍛えられて逞しくなった後は、とし、花里と呼び合うようになって今や唯一の異性の親友だ。
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