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「それでは、これから動画をご覧頂きます」
途中、動画が流れる時間だけが束の間の休憩だ。
ここで自分の声を立て直さないと・・・。
暗がりのホールで動画が煌々と再生されている。
とんとんとん
不意に隣の席のかけとがあげはの肩を叩く。
「・・・ーーえ?」
驚くあげはに、かけとは深呼吸の仕草をした。
観客には気づかれないような、わずかな仕草だったけれど。
それからにっこり笑うと、こそっと下の方でグットのサインをあげはに送った。
ーー深呼吸して頑張れ!
そういうサインだとあげはは受け取った。
うん!!!頑張る!!!
動画の再生が終わると、あげはは深呼吸をひとつして、再び読み始めた。
・・・ーーあ、声の震えが止まった・・・。
桜木くんってすごいな。
私にこんな力をくれるなんて。
・・・・・・ーーーありがとう。
そう思いながら、あげはは残り最後の文章を丁寧に読み上げ、
「これで、私たちの業務研究の発表を、終わります」
最後に、みんなで深々とお辞儀をした。
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