1024人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
キィ──バサバサバサッ
下駄箱の扉を開けると乾いた音を立てて雑に4つ折りにされた紙が大量に雪崩落ちた。
……いい加減、中身は見ずともわかる。
内容はよくある果たし状…なんてものではなく。専ら『舎弟もしくは弟分にしてくれ』というものだ。テンション眼鏡と言われていた時もチラホラ入っていたがココ最近は特に多い。
不良で馬鹿だからなのかあれもこれも、名前や連絡先、時間や何処かに来いとかも何も書いてなくて……ただのイタズラかな?程度に思っていた。
のだが。少し前から異常な量が入れられるようになって、イタズラどころか最早嫌がらせなんじゃないかと思ってきている。やはりどれも用件だけがど真ん中に筆圧の濃い鉛筆でデカデカと書いてあるのだけなのだ。その要望を叶えるために必要になる肝心な情報は何も書かれて居ない。
そしてもう一つ少し変わったことが起きている。
紙が下駄箱から滑り落ちると俺は中に残っているものも落ちたものも全て拾って慣れた様子で鞄の中から畳んだ紙袋を出して入れていく。
全て持ち手の着いた紙袋に入れると、スッキリした下駄箱の中には……
「……消しゴムが、6つ」
紙が無くなったことでその下にあった物体が姿を現した。
今日は消しバトして遊ぶか、等と慣れた様子でその消しゴム達を制服のポケットに入れると上履きに履き替えて歩き出した。
……久しぶりだなぁ消しゴムバトルー小学校以来?今のクラスのみんなでやるの楽しみだな~。
いつからか時折こうして関連性もなく何かが下駄箱に入れられるようになっていた。
ハサミだったりナイフだったりした時は流石にいじめかと思ったが、時々お菓子が入ってたりヘアピンやヘアゴムだったりと初めの頃はたいそう判断に困った。まぁ……恐らく同一人物だろう。
4階にある1年の教室へ着くと隣のクラスから来ていたのか叶多が昴達と俺の机の周りに集まっていた。……愛は寝坊のため遅刻だ。
「おはようございます、レンさん」
相変わらずの淡い水色髪と日に焼けた肌のコントラストが魅力的である自分の“弟分”らしい叶多がいの一番に挨拶をしに駆け寄ってきた。…そう言えば最近増えた新しい弟の蒼也も居ない。まぁ彼はマイペースだからな、と自分のことは棚に上げて一人頷いておいた。
最初のコメントを投稿しよう!