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「帰り、大丈夫か? 気をつけて帰れよ」
「心配しなくても大丈夫だって。仕事でもっと遅い時間になることなんてしょっちゅうだよ」
あまりにも心配するので笑顔で答えた。
「玲も身体に気をつけてね。食事は外食ばかりじゃだめだよ」
「気をつける。それから向こうに行ったら、いまよりは仕事はセーブできると思うから、週末はなるべくあけるようにするよ」
「うん。なるべくわたしも会いにいく」
新幹線が定位置で止まった。とうとうこのときがきた。
玲が新幹線に乗り込んだ。
ホームにはわたしたち以外にも名残惜しそうに別れを惜しむカップルが数組。泣き腫らす女の子も。
でもわたしは笑顔で見送った。やっと通じ合った気持ち。これ以上、幸せなことはない。
壱也、ありがとう。これもすべてあなたのおかげ。あなたがわたしを愛してくれたから、こうして玲とまた結ばれたんだよ。
「明日香、愛してる」
別れ際のキスのあとに玲が言ってくれた。
「わたしも……ずっと愛してた」
心の奥底に隠していた気持ちをようやく口にできる喜び。その感動を噛みしめているなかで。
「明日香が初めてだよ。こんな気持ちになったのも、こんなことを言うのも」
そんなセリフが落ちてきたときには、ドアがわたしたちを阻んでいた。
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