運命なんか、信じない

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ゆくゆくは資格を取り、彼の会社を支えていこうと考えていたのだが。 「はあ……」 そんな風に思い描いていたのが、遠い夢のようだ。 ネットカフェに泊まりながら、千歳は再就職先を探していた。 不景気でもない平和なご時世。 すぐに就職先が見つかるだろうと高を括っていたが、現実はそう甘くなかった。 簿記資格を持っているくらいでは、就職は易しくない。 ……いや、アルファやベータであれば、このくらいの資格でも歓迎されただろう。 オメガは三ヶ月に一度、発情期の一週間は休暇を取らせることが、雇用主に法律で義務付けられている。 引き換えに、オメガは雇用主に対して、発情期の日を告知しなければいけない。 発情期のオメガを無理矢理働かせた結果、フェロモンに起因した「事故」が多発したため、告知義務が法律で定められた。 能力的にも身体的にも、他の性より劣るオメガ。 それなのに、一週間休ませる義務がある。 オメガは働くな、とでも言われているようだった。 両親は行方知れずで、祖父母が千歳の親代わりだ。 次の職が決まらなければ、一度実家に帰ろうかとも、頭をよぎった。 しかし、結婚を前提に、拓海と交際していると紹介したので、祖父母は単身で帰った千歳に帰省の理由を聞いてくるに違いない。
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