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運命なんか、信じない
──運命なんか、信じない。
「なあ、どうしてオメガなんか産んだんだ? 腹にいるときから分からなかったのか」
「ごめんなさい……。次は、今度こそ必ずアルファを産むから。だから」
──何で。どうして?
子供ながらに思った疑問を口にすると、顔に拳が飛んできたことがある。
千歳は押し入れの中で息を殺して、襖の細い隙間から二人を見つめた。
アルファの父親と、オメガの母親。
二人は自分達のことを「運命の番」だと、御伽噺のように毎夜、千歳に語って聞かせた。
世界一綺麗で素敵な言葉に包まれた両親が、千歳の宝物だった。
ぞっとするようなおぞましい声で泣いて、父親の足元に縋りつく。
どうしてこんなことになってしまったのか、まだ七歳の千歳には分からなかった。
……────。
「今すぐ荷物をまとめて出て行ってくれ」
テーブルに散らばった写真を、和泉 千歳は呆然として見つめていた。
身に覚えがある……のはあるが、どれもこれも「そう見えるように」隠し撮りされたものだ。
「違う……! これは、事故のようなものでっ」
突然のことに混乱して、まともに考えられないまま、とにかく千歳は弁明する。
だが、纏らないままの下手な言い訳は、彼の怒りに余計な燃料を投下するようなものだった。
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