運命なんか、信じない

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運命なんか、信じない

051371e5-1080-45e3-ad12-27510f61fc34 ──運命なんか、信じない。 「なあ、どうしてオメガなんか産んだんだ? 腹にいるときから分からなかったのか」 「ごめんなさい……。次は、今度こそ必ずアルファを産むから。だから」 ──何で。どうして? 子供ながらに思った疑問を口にすると、顔に拳が飛んできたことがある。 千歳(ちとせ)は押し入れの中で息を殺して、襖の細い隙間から二人を見つめた。 アルファの父親と、オメガの母親。 二人は自分達のことを「運命の番」だと、御伽噺のように毎夜、千歳に語って聞かせた。 世界一綺麗で素敵な言葉に包まれた両親が、千歳の宝物だった。 ぞっとするようなおぞましい声で泣いて、父親の足元に縋りつく。 どうしてこんなことになってしまったのか、まだ七歳の千歳には分からなかった。 ……────。 「今すぐ荷物をまとめて出て行ってくれ」 テーブルに散らばった写真を、和泉(いずみ) 千歳は呆然として見つめていた。 身に覚えがある……のはあるが、どれもこれも「そう見えるように」隠し撮りされたものだ。 「違う……! これは、事故のようなものでっ」 突然のことに混乱して、まともに考えられないまま、とにかく千歳は弁明する。 だが、纏らないままの下手な言い訳は、彼の怒りに余計な燃料を投下するようなものだった。
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