幕間

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   黴と埃の臭いが嗅覚を刺激する。天井板の隙間からわずかに差し込む部屋の明かりが、屋根裏の暗闇を照らしていた。 「──指示通りにはいかないな」 「武士が邪魔だ。排除をする必要がある」  低い声で囁くような会話が聞こえてくる。  天井板の隙間から部屋の中を覗き込むと、一組の男女が会話をしていた。姿とは一致しない。しかし、二人の魔力は、確かにあの髪飾りとカフスボタンにかすかに残っていた魔力と同じだった。 「なぜあんな小娘が欲しいのか理解できない」 「……理解できなくとも、命令なら従うまでのことだ」 「あぁ、わかっている」  無表情でうなずき合う男女はどこからどう見ても人間族にしか見えない。しかし、彼らがただの人間族であるはずがなかった。  ──咲夜が彼らを発見したのは、本当に偶然だった。 .
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