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優しすぎて、本音を隠して話さないのはコタの悪い癖だ。
そして、いつも自己保身しかできないのは、私の悪い癖。
「コタ、宮尾さんと付き合うの?」
「え?」
「もう、会うのやめよっか」
コタに突きつけられるのが怖くて、自分から言い放つ。
口にしてから、胸に苦しい後悔が広がった。
否定してほしい。そう思う私は、コタの好意に甘えきっていたのだ。
「……リッコは、俺のことそんなに好きじゃなかったよな」
重たいもので頭を殴られたような衝撃だった。
コタの気持ちを蔑ろにしていたことに、いまさら思い至る。
「違うよ……」
「いいよ。もう、やめよう」
心の叫びは、喉に詰まって出てこない。
呆然としているうちに、コタは立ち上がった。
「じゃあね」
悲しそうな笑みを残して、コタはこの場所から去っていった。
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