◇06. 「南実子さん。ぼくじゃ、……駄目ですか?」by 内海正真。

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◇06. 「南実子さん。ぼくじゃ、……駄目ですか?」by 内海正真。

『ぼくの奥さんになるつもりはありませんかっ』  何か月経っても蘇るあの台詞。あんな直情的に、プロポーズをされたのなんて、南実子は、生まれて初めてだった。  率直に、嬉しい。でも、『何故自分が?』という気持ちがある。それに、…… (バツイチ子持ちのわたしなんかじゃ……)  職場での堂々たる発言以来、内海はしきりにあのことでいじられている。南実子と内海が喋っているさまに、周囲の視線が集まる……内海の気持ちは嬉しいが、ただ、いまの自分では答えらえないと彼女は思う。いまの状況のままでは。 (ちゃんと……断ったほうが、いいよね……)内海と会うのは職場だけなゆえに。また、プライベートでのお誘いも一切断っているがゆえに、彼の気持ちを拒むチャンスがない。煮え切らない自分に嫌気がさす。無邪気に……いくら南実子が塩対応をしてみても、お昼休みにせっせと必ず南実子のところに出向き、南実子に話しかける内海が、忠犬ハチ公のように思えて、突き放すことが出来ない。  ただ、季節はもう十二月。そろそろ……、限界か。ちゃんと、彼に話をつけて、拒まなくては。
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