◆01. 「妻は何故、自分と離婚したいなどと言うのでしょう」by 夫。【夫の章】

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◆01. 「妻は何故、自分と離婚したいなどと言うのでしょう」by 夫。【夫の章】

 一晩考えたが、妻から離婚を切り出される理由がさっぱり分からなかった。  何故だろう。酒も飲まない、煙草も吸わない。浮気はおろか、博打なんかもしない。健全で、勤勉。散財なんかもしないはずのおれが。どうして。  朝はどんなときも平等に訪れる。通勤電車のなかで……おれなりに。なにが、悪かったのか、考えようとしてみる。……いや、おれ、家賃負担してるし。ここら辺は家賃が高いし、生活費のなかで一番負担が大きい金額だ。それを負担するおれの身になってくれ。  それに比べたら、妻の負担するぶんなんて食費と生活費のみであるし――そもそも妻の給与がおれよりも低いから、っていうか、だから妻が家のことを全部する、って話で結婚に至ったはずなのに……いったいなにを考えているのだあいつは。恩を、仇で返すような真似をしやがって。  不可解さの次はむかむかが胃の中をせり上がる。――ああ。こういう日に在宅勤務じゃなくてよかった。妻の顔なんか極力見たくはない。
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