狼さんは戻りたい

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そして球技大会当日。 開始式が終わり、今は客席に座っている。バレーは午後に行われるので午前中は暇だ。 横には森間 騒(もりま そう)澤谷 悠真(さわたに ゆうま)。体育館中に響き渡るくらいの大声で会話をしている。 「なぁ!!!!優はバレーだよな!!!!俺はバスケに参加するんだ!!!!!!」 「………………ああ」 「騒くんバスケか!俺は狼夜くんと同じバレーだから騒くんの頑張ってる所、見れるね!騒くんも俺の試合、見てくれると嬉しいな」 「もちろんだ!!!!悠真は友達だからな!!」 「うん!ありがとう。騒のために頑張るよ!」 うるさい。声がとにかく大きい。 今はドッジボールの2回戦目が始まっている。 ドッジボールをしている選手たちが怪訝そうにこちらを見ていることから、どれだけ大声で話しているのか、どれだけ迷惑をかけているのかよく分かるだろう。 なぜだろうか、騒と久しぶりに会えたのにあまり楽しくない。むしろ鬱陶しいというか……… 「なぁ!!!!優聞いてるのか!!!!無視はダメなんだぞ!!!!」 いつのまにか考え込んでいたみたいだ。 無視していたわけではないけどここは素直に謝った方が無難だろう。 「…………ああ、ごめんな。少しボーっとしてた」 「許してやる!!次からはちゃんと話を聞いてろよな!!!!!!」 「………………」 そこからは会話という名の愚痴と自慢がひたすら続いた。 生徒会の人たちと遊んだ。好きなお菓子を買ってもらった。ゲームをした。生徒会長はいつも遊んでくれない、仕事ばっかりしている。あのメーカーのお菓子は美味しい。でもあのお菓子はまずかった。勉強したくない。風紀委員がいじめてくる。友達が増えた。最近眠い。枕が低い。テレビみたい。etc………… マシンガントークに適当に相槌を打ちながら横目で試合を観る。 今は3年B組と2年B組が対戦している。 高速で球が飛び交い、次々とあたっていく。 ドッジボールはあまり人気がない。 あの高速に飛んでくる球を避け続けなければならないのだ。後、あたると普通に痛いらしい。 そんな恐ろしいドッジボールの隣では1年C組と2年C組のバドミントンが行われている。 そろそろドッジボールが終わりそうだ。3年の圧勝である。 時間を確認すると、始まってからまだ1時間も経っていなかった。 騒はまだ話し続けている。 2時間くらいで限界が来た。お手洗いに行くと言って席を離れる。 時計を見ると11時。確かバレーは1時半からだ。昼食を挟んでからすぐなので早めに昼食を取った方がいいだろう。 人気のない静かな校内を歩く。2階に到着し、空室の前を通りかかった時だった。 いきなり後ろから拘束され、甘い匂いのするハンカチで口元を覆われた。 不意打ちだったのでまともに抵抗が出来ない。 それでも必死に抗うが、びくともしない。 だんだんと身体から力が抜けていく。 そして目の前の視界が真っ白になった後、俺の意識はプツリと切れた。
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