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諦めているのに母から愛されたいと願っていた頃の私の姿だった。
我慢していたはずの涙が止まらない―――泣いても誰も慰めてはくれる人なんていないのに。
目が覚めると涙で頬が濡れていた。
「夢……」
母の夢だった。
目覚めてからも、嫌な夢を見たせいで、目から大粒の涙がこぼれ落ち、止まらなかった。
時々、こうして見る夢は私を現実に引き戻す。
最近、母の夢を見ていなかったのに泉地がいなくなったせいだと気づきたくないのに気づいてしまった。
「泉地」
名前を呼ぶと、ほっとした。
今、泉地がいなくてよかった。
私より大変なはずの泉地にすがってしまうところだった。
なんて、情けないの。
「水、飲もう」
顔を洗い、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、冷たい水を口に含んだ。
『もうひとつ、教えてあげるよ。ナイトは辛党で甘い物は好きじゃない』
ぼんやりとペットボトルの容器を眺めた。
帰ってきたら、甘くない飲み物にしよう。
それから、残りの夏休みをどう過ごすか聞こう。
ゆらゆら揺れる水を見つめて、目を閉じる
時計はまだ夜中の二時だった。
目を閉じても眠れそうにない。
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