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中学生になった時  家の二階の 一番北側の八畳間を 自分の部屋として使える事になる 初め 親から そうするよう言われた時 イヤな気持ちだった その前まで 自分の部屋として使っていた 狭苦しいけど  二段ベットが備えつけられた部屋が 気に入っていたからだ だが家族の様々な事情により 自分の都合を言い張る事もできず とにかく 北側の八畳間が 僕の部屋になった この部屋の良いところ は 窓から屋根の上に出られること 家の一部分は一階しかなく その部分の低くなった屋根が 僕の部屋の窓の下にあったので 僕はよく窓から外に出て 屋根の一番高いところへ行き 昼寝したり ギターを弾いたり 音楽を聴いたりしていた 夜中に屋根から見上げる星空は 素晴らしかった ところで その屋根の上で 誰かに出会う なんてことは ある訳ないんだけど ある時 どこから来たのか 猫に 出会った 猫は 多分どこかの飼い猫だった とても人懐こくて 出会った時から 人にスリスリしてきて 離れようとしない よその家の猫なら 早く帰ってもらおうと思い 僕は部屋に戻って窓を閉めた 猫は窓の前で ジーッと いつまでも僕を見ていた 次の日 学校から帰ってくると 窓に また猫が来ていた 次の日も その次の日も 猫は熱心に窓辺に通ってきた そんな日が続き たまに 猫が来ていない日があると 僕は 少し心配になるほどだった(笑) やがて 来たり来なかったりする 猫の戦略に負けた 僕は ある時 とうとう 窓を開けて 猫を部屋に入れてしまった 猫は特に何をする訳でもなく 僕のベッドの上に寝そべって のんびりと過ごしていた まあ それくらいのことならいいか そう思った僕は  猫が窓辺で待っていると とりあえず部屋に入れてやり 自分が本を読んだり 音楽を聞いたり 勉強したりする 背後で 猫が おとなしくしているのを それとなく楽しむようになった 猫は 何も話さない その 行動の意味が 謎 毎日毎日 餌も与えないのに 何が気に入って ここへ来るのだろう 0a8e82e2-0371-4a02-ad94-c288494a3f46 僕が 何もしないのが 案外 気に入っているのか 僕は 猫の扱いに慣れていないから その命の特性や才能を学んでいなくて 猫が どれほどの思索を巡らせているか 猫が どういう音楽が好きか 猫は 色や形がどんな風に見えるか 猫は なぜ僕の部屋へ通うのか すべてが 謎だった 謎 を 近くに置くこと は 不安でもあり トキメキでもあり そんな日々が 数ヶ月 続いた ある日のこと ばあちゃん に 僕のベッドの シーツや布団カバーを 洗濯しようとしたら 「なんだか妙な匂いがした」 と 言われた ばあちゃん は 猫臭い とは 言わなかった が 逆にそのことで 別の疑いをかけられているとしたら?! と 思うと 急に不快になり 僕は 猫が来ても もう 部屋に入れてやらないことに決めた 猫が 悲しかったかどうか それは知らない ただ 僕は ツラかったから 今でも そのことが忘れられない 犬 や 猫 との出会いは その後 異性との関係性に かなり大きな影響を与えた ただ 人間として優しく接する それ自体が相手を傷つける場合もある どのくらいなら大丈夫か なんて 相手の感性は 人それぞれだから 何度 失敗しても 学習できない 犬 も 猫 も 人 も 今でも 相変わらず 謎 だ
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